月のあかり

 
 満央‥‥‥
 
 ぼくは居ても立っても居られずに満央へメールをした。
 二ヵ月半振りの彼女への連絡だった。
 正直、嫉妬や自己嫌悪から陥った複雑な思考狭窄で、《別れ》という悲観的結末を選択したことに後悔していた。
 ぼくにとって満央という女性は、どんなことがあっても決して手放してはいけない、たった一人の存在だったはずだ。
 
『元気か?』
 
 それでも僅かその一行が、いまのぼくにとっての精一杯のメッセージだった。
 しかし、無情にもメールは届かなかった。
 彼女はメールアドレスを変えていたのだ。
 ぼくは携帯をソファの上に放り投げた。
 直接電話を掛ける勇気までは搾り出せなかった。
 つくづく自分がちっぽけで情けない道化師の成り損ないに思えた。
 失意と落胆の海原に投げ出されたぼくは、力尽きて沈んでゆく遭難者のように、深い眠りへと誘われていた。
 
      ※
 
 ためいき色の霧の中に男女の声がする。
 
 ぼくは霧を掻き分けるように声のするほうへと進んだ。
 それは自分の意志ではなく、何かの意志に呼び寄せられているようだった。
 そしてすぐに、自分がいま夢の中にいることに気が付いた。
 このためいき色の夢の中で、一体何が始まるのだろうか?
 ぼくはじっとその男女を観察することにした。