それからというもの、長澤ユカからの連絡が、ぼくの携帯の着信履歴を頻繁に賑わすこととなった。
彼女は何かあると、逐一ぼくに報告の一報を入れてきた。
当然内容は満央と高梨のことだった。
ぼくとの不如意な別れを飲み込んだあと、満央は高梨に引っ張られる形で、その稚拙な関係の要求を渋々了承していた。
さぞかし高梨にとって満央との関係の前進と成就は、濡れ手に粟、棚から牡丹餅だったに違いない。
彼らは劇団の稽古が終わったあと、ほぼ毎日のようにパチンコ店に入り浸って、スロットに興じているとのことだった。
しかし、肉体関係を結ぶ一線だけは越えていなかった。
それは夜な夜な高梨の魔手に、その身体を捧げている長澤さん自身の遠回しな言葉の端々で、充分に推測することが出来た。
高梨が何故その一線の越境に躊躇しているのだろうか。
舞の死のことがトラウマになっているのか、満央をプラトニックな愛の対象として大切にしているのか、その真意は、ぼくにも長澤さんにも分からなかった。
長澤さんにとってもこの事態は複雑だろう。
高梨は元彼であり、親友だった舞の彼氏でもある。
そしてセックスフレンドという腐れ縁で彼に抱かれ続け、いままた舞の妹であり、自分も妹のように可愛がっている満央が、高梨と深い関係に発展しようとしているのだ。
まるで武家社会の正室や側室のような入り乱れた繋がりは、冷静さを失わせる半狂乱な世界かも知れない。
その歪んだ関係の遠い縁者のような存在のぼくに連絡を取り、吐き出すように高梨のことを話すことで、彼女は冷静さを保とうとしているのだろう。
そんな悲恋な感情が汲み取れるだけに、本来なら嫉妬の炎で拒絶したい高梨と満央の行動録を、ぼくは毎回黙って聞き続けていた。

