あの夢は、決まってネガティブな意味合いを纏っているように思えるし、《ためいき色の白昼夢》という説明のつかない幻覚のような状態を体験したばかりで、新たにこれ以上の感傷的な情報を取得したくはなかった。
そして何よりも、以前《正夢》として例えたように、現実の次元に具現化してしまう恐怖感に襲われるからだ。
「直樹さんが黒い雲の向こうに‥‥‥」
「ごめん満央。やっぱり聞きたくない」
ぼくは、話し始めた満央の言葉を慌てて制止した。
ぼくの思いを察したのか、彼女も出かかった言葉を飲み込むようにして口を噤み、再び俯いた。
やがて呼吸を整えるほどの小さな時を流してから、満央が顔を上げてこう言った。
「直樹さんにとって、私は必要な存在なのかな?」
「急に何を言い出すんだよ」
ためいき色の白昼夢と、あべこべのキャスティングでありながら、まったく同じやり取りの《正夢》的な展開に愕然とした。
ぼくの両肩は何かに憑依されたようにズシリと重くなり、心臓を握り締められたような胸苦しさを感じた。
「もし私のことが重荷になるようだったら、正直に言ってね」
「そんなことないよ。あるわけないじゃないか」
「でも、私、本当に直樹さんに相応しい女の子なのかな?‥‥」
時々そう感じていたの、と後付けした言葉に、彼女なりの迷いや葛藤があったことが窺えた。

