やっと満央に会えたというのに、ぼくの声は自分でも不明瞭に感じるほどの低いトーンだった。
満央は、ぼくの反応が不自然なのを感じ取りながらも、努めて明るく振る舞おうとしているようだった。
「ねえ、雨凄かったの?」
太ももまで濡れたズボンに気が付くと、甘えるような仕草で膝の辺りを指で突いてきた。
「うん、もう止んだみたいだけどね」
「わざわざ来てくれて、ごめんね」
「いいんだよ。ぼくが満央に会いたかったんだからさ」
そう言うと、彼女はコクリと頷いた。
「でも、満央が本気で女優さん目指してるなんて知らなかったよ」
ぼくの唐突な言い方に、満央は目をパチパチさせた。
「目指してるってほどじゃないんだけど‥‥ なんとなく直樹さんには言いづらくて」
「どうして!?」
高梨には話せて、ぼくには話しづらいことなのだろうか。
「だって、直樹さんに言ったら笑われるかなと思って」
ぼくは少し強い口調で言った。
「そんなことないよ。満央の夢を笑ったりするわけないじゃないか!!」
満央は黙って俯いた。
フォローのつもりの言葉が、かえって彼女を畏縮させてしまった。

