「そうか‥‥ 満央も頑張ってるんですね」
ぼくは、想像から産み落とされた嫉妬を悟られぬよう、当たり障りのない言葉を返した。
長澤さんは小刻みに頷いた後、ひと呼吸空けてこう言った。
「さっき言ったこと、満央ちゃんの代弁だけじゃないですよ」
「えっ?」
「きっと舞もそう言うだろうって」
「どういう意味?」とぼくは訊き返した。
「舞と満央ちゃんて性格は違っていたけど、男性の好みは似ていたから」
「そうなんだ」
ぼくは他人事のように感心して言ったけど、すぐに『じゃあ、どうして?』という疑問が頭をもたげた。
長澤さんは、ぼくの心底を見透かしていたようだった。
「じゃあ、どうして舞は、裕也なんかと付き合ったのかって思うでしょ?」
「ああ、確かに」
疑問に対する指摘は、見事に的を得ていた。
年齢の違いを除けば、どちらかというと、ぼくと高梨は正反対のタイプだろう。
「男性への免疫不足かな」
そう長澤さんが言った。
それは以前、満央の母親から聞いた言葉と同じだった。
「それは、ぼくが毒々しいってことかな?」

