ぼくの過剰反応は、つい挑発的な言い方にエスカレートしていた。
「どうして?って‥‥‥」
高梨は言葉を詰まらせた。
しかし彼の感情は如実に表情に表れ、傾き掛けた怒りから、疑問にくゆる表情へと変化した。
そして息を吐くようにこう言った。
「知らないんですか?」
「知らないって、なにが?」
ぼくが訊き返すと、今度は哀れむような言い方をした。
「満央ちゃんの夢ですよ」
「夢?」
「そう、夢。彼女の夢です」
それは、いつもぼくらが話しているあの《ためいき色の夢》ではなく、満央の本当の夢。
《父兄のような包容力の彼氏》そう自負するぼくが、彼女が将来に何を考え、何を夢見ているのかなんて、具体的に話したこともなかった。
そしてその夢が何処へ向かって飛び、何処へ目指して走っているのかなんて、考えたことすらなかったのだ。
「彼女、女優さんを目指しているんですよ」
女優‥‥‥そのきらびやかな言葉のイメージと、容姿は端麗だが、少し地味めで奥床しい満央のイメージとは、『似て非なるもの』として、ぼくの頭の中ではすぐには合致しなかった。
「彼女、素質あると思いますよ」

