月のあかり

      13
 
 
 日曜の午後はスコールのような雷雨に見舞われた。
 
 ぼくは満央からもらったメールの説明を頼りに、都内にある古びた雑居ビルの前に佇んでいた。
 そこには地下へと下りる階段がある。
 
 
『劇団 青月光』
 
 
 階段の下り口には、そう書いた看板が小さく控えめに立て掛けてあった。
 
 ぼくは鳴り響く雷鳴と稲光に急き立てられながら階段を下りた。
 路上に溢れた雨水は、ぼくの後を追随して滝のように階段を下り、《見送りはここまで》と別れを告げて側溝へと流れ込んでいく。
 曇りガラスの重いドアを開けると、会議室によくある細長いテーブルが置いてあり、受付嬢のように一人の女の子が座っていた。
 彼女は下を俯き、読書にでも耽っていたようで、すぐには侵入してきたぼくの存在に気が付かなかった。
 しかし入り口の重たいガラスのドアを開けたせいで、外の雷鳴が室内にも大きく響き渡ると、びっくりしたようにこちらを向いた。
 
「あ‥‥‥」
 
 傘はさしていたものの、激しい雨に打たれ、ズボンの裾から太ももの部分までずぶ濡れになっているぼくの姿を見て、彼女は声にならない声を発したまま、じっとこちらを見ていた。
 
「こんにちは」