「なにニヤついてるの?」
「いや、べつに」
苦笑いを押し殺すと、頬の筋肉が妙にむず痒くなった。
その後、満央は自分の部屋へとぼくを案内してくれた。
満央の部屋はカーテンもベッドのシーツも薄いピンク調の柄で統一され、いかにも女の子らしい雰囲気の部屋だった。
机の上や本棚には、沢山のフォトプレートや小さなぬいぐるみたちが、きしめくように飾られていたけれど、どれも不規則に乱れることなくキチンと整頓されていて、彼女の几帳面さが窺えた。
「ちょっと待ってて」
満央はそう言ってぼくをベッドの端に座らせると、部屋の隅へと歩いていった。
そこは一見、木目調の備え付け家具か何かに見えたけど、実はお洒落なドアになっていて、隣りの部屋へと繋がっていた。
「そっちも満央の部屋なの?」
呼び止めるようなぼくの聞き方に、満央は首を振って答えた。
「こっちはお姉ちゃんの部屋なの」
「‥‥そうなんだ」と言うぼくの返答も聞かないうちに、満央は吸い込まれるように向こうの部屋へと入って行ってしまった。
ドアは少し開いたままだった。

