大当たりが終わってしばらくしてから、満央は席を立ってぼくのほうへ戻って来た。
満央の知り合いだというその男も遊技を止め、コインが山盛りになったドル箱を持って一緒にこちらに来た。
満央はひと遊び終えた充実感と、まだ遊び続けたいという物足りなさの入り混じった微妙な笑顔で、ぼくをじっと見つめた。
「ねえ、直樹さん。紹介するね」
満央は後ろに立っているその男を自分の隣に並ばせた。
ぼくは反射的に背筋をすっと伸ばして身構えた。
「彼、高梨さんていうの。お姉ちゃんの元カレだった人なの」
そう満央に紹介されると、その男は握手を求めるように右手を差し出してきた。
「よろしくどうぞ」
「あ、あぁ、こちらこそ」
ぼくはしどろもどろした返事で、威圧されたように弱々しく右手を出してしまった。
何だか図々しくて馴れ馴れしいその男の態度や雰囲気が、ぼくにはどうにも受け入れ難かった。
ぼくのほうの紹介は?
と満央に訊くと、「さっき説明しといたよ」と言って割愛された。
一体、彼女はぼくという存在をこの男に何と紹介し、二人の関係を何と説明したのだろう。
そんな思案を巡らせるのと同時に、ぼくの記憶のメモリーカードがようやく起動した。
高梨‥‥‥って。

