アホすぎる俺と男前すぎる彼女との愛の奇蹟



「…戻りたくねぇなぁ」

ため息混じりにそうぼやくと識は横目で俺の方をみた。

「なんで」

「だって皆冷めてんだもん…」

簡単に朝の出来事を伝えると識は立ち上がり鞄を掴んだ。

「…戻んの?」


俺が情けない声を出しながらそう尋ねると識は目の前のコンクリートの塊を指差した。


「食後の昼寝。」

「さぼるのか?俺も!!」


そう言って立ち上がろうとする俺を識は腕をかざし静止させた。


「アンタは戻れよ」

「なんでだよ…?迷惑?」

「…そうじゃなくて、転校初日から授業サボるのはマズイだろ」

「……。」

どうしても一人であの教室に戻るのは心細くて足が動かない。

識はそんな俺を見てため息をつくと近づいてきた。



「…ここの連中は多分アンタが前にいた所の連中よりも大人しいだけだよ。

自分から積極的に離しかけてみな、話してくれるから」


そう言い残して識はコンクリートの塊の上に姿を消した。


「…うん、」

「わかった!やってみるよ俺!!サンキューな識っ!!」


立ち上がって元来た方向へと足を向けながらそう叫ぶと、灰色の固まりの上部で小さくひらひらと面倒くさそうに揺れる手が見えた。