「…おいっ、大丈夫かよアンタ。」


俺の顔を怪訝そうに窺(うかが)っている全身に黒いジャージを纏った“男子生徒”の姿が目に映り、一瞬意識を飛ばしていた俺だったが慌てて飛び起きた。


「と…っとととと…っ」

緊張して口がまわらない。

「と…?」

得体の知れないものを見るような目で俺を見つめ、首をかしげる彼を逃がすまいと俺は彼の腕を掴んだ。


「俺とととと友達になって!!」



「……嫌。」


即答で返ってきた返事に俺は再びぶっ倒れた。

後頭部を強打したのが思いのほか痛かったということよりもなによりも、二度目の拒絶を受けた俺の心はズタボロ。


俺を見下ろしている彼に恨めしげに視線を送っていると、男子生徒は目をそらした。


「…わかったから。…その目はやめろ」

その言葉を聞いて、今まで堪えていた涙と鼻水が大洪水を起こした。






「…アンタ転校生なの?さっきなんか喚いてたけど。」

「うんそう…」

「誰…担任?」

「桜井って言ってた気がする」

「…アンタのクラスって2-Cだろ。つーかタメかよ。」

そう言って彼はありえないとばかりに顔をしかめた。


整った顔つきと今にも人を殺しそうな眼差し。

そしてダメージのでかい飛び蹴りのせいもあって最初は怖い奴かと思ってしまったけど、なんだかんだ俺に付き合ってくれている所をみると悪い奴ではなさそうだ。