「うわっ…また赤点だ」

答案用紙という紙を開いて第一声。
答案用紙の持ち主である少年は片手でぐしゃりと紙を丸めて鞄の中に放り投げた。

「ちょっとアルト。そんなにして…また怒られても知らないよ」

アルトと呼ばれた少年は声の主である少女をじろりと睨んでから机に伏せる。
そんな彼を見てため息をついた少女は丸まった答案用紙を広げて、その悲惨な点数にまたため息をつく。

アルト・フリーダ。ここエドヴァン魔法学園の生徒。
エドヴァン魔法学園というのは、この国唯一の魔法使いを育成する学校。
10歳からの基礎過程5年に加え、そこから進学試験により魔法のタイプごとの専門過程に分かれる。
アルト達は現在基礎過程の5年。

「あんたさぁ…下手したら留年だよ」

悲惨な点数――12点と書かれたテストを再び眺め、アルトを哀れみの目で見る少女、アルトの幼馴染みミリア・イヴォンヌ。セミロングのオレンジ色の髪と瞳をもつ、いわば美人の分類に入る少女。

「うるせー。一応これでも勉強したんだよ」

「アルトってば実技は出来るのにねー」

アルトはミリアの嫌味に耳を塞ぎ、机にうつ伏せる。すると後ろから声がした。