―――パァン…パァン…
車のクラクションが鳴り響く。
「あ、来た」
その車は兄貴のだった。
「(案外、早く来たな)」
もっと遅れると思ったのにな。
「お前、遅れると思っただろ」
車のドアを開けてすぐにそう言ってきた
「…思った、」
「んなわけねぇだろ。何百回、ここに来てると思ってんだ」
何万回かもしんねぇ、とボソッと呟きながら前を見る
「あ、シートベルト着用してね」
語尾にハートマークがつきそうなくらい甘ったるい声で言う兄貴は、まじで俺らの兄貴なのか疑いたくなるほど気持ちが悪い。
「「……」」
無言でシートベルトをつける俺と雪音。
