どんな会話をしているのか距離があるため分からない。


…というか、あの二人が小声で話してるからなんだろうけど。





「よし、行くか雪音」


「…ん、」




「じゃ、またあとで来るな。白兎」


「あぁ、気ぃつけてな。…あと、マスターと呼べ」




「…気が向いたら」


「雪音に言ってねぇよ。雪夜、お前だ」




「いーじゃん。雪音が答えてくれたんだから。雪音と俺は考えてる事は一緒。なぁ?」


「そーゆ事。じゃあ、ね。マスターさん」




「「…なんか、かっこよかった」」



あたしの発言に対してハモった二人を背にして店を出た









ふわり、と吹いてくる風は“あの時”とは違う。



隣を歩く雪夜からは、何故かコーヒーの匂いがした。




その匂いは、あたしの鼻を掠(カス)めただけ。





“あの時”と比べもんにならないくらいの優しい風があたし達の間を吹き抜ける。