水希ちゃんは、あたし達や蒼希のことを“知らないふり”をしているっぽい。
…そんな演技しても無駄なのに。
雪夜が振り返って二人に手を降る。
水希ちゃんの正体が分からないこいつが羨ましいよ。ほんとに。
「(正体知ったら、こいつはどうすんのかな)」
なんて、考えてみたりする。
あぁ、めんどくさいことになったな。
めんどくさいのは、嫌いだ。
「(さぁて、これからどうするか)」
蒼希は雪夜が大好きだから、生活の中で話しかけたり、ついて来ると思う。
そう、大好きなんだよ。雪夜が。
いや、まじで。
キモイほどに。
そして、水希ちゃんはどうだろうか。
はぁ、と無意識に溜め息が出る。
でも唯一楽しみなのが水希ちゃんが…
姫谷水希が被っている“偽り”という名の画面を剥ぎ取ること。