海斗サイド

「…はぁ」大きく息を吸って病室の中に足を踏み入れた。
入って行った先には予想通り杏里の親の姿があった。
俺は親の近くに行き深々と頭を下げた。
「ご無沙汰しています。おじさん、おばさん。」
俺がそういうとおばさんが一歩近くによった。
「久しぶり。海斗くん頭をあげて?」
そう言われ俺はそっと頭をあげた。
頭をあげてすぐに目に入ったのはおばさんじゃなくその後ろで寝ている杏里の姿だった。
「杏里…きたよ」
俺がきた時にする最初の挨拶。
「ねぇ海斗くんもういいのよ。そんなに毎日こなくても杏里には届いているはずよ。」
突然おばさんがそんなことを口にした。
でも俺はそんな言葉に答えるように黙って小さく首を横にふった。
するとおばさんとおじさんは嬉しいような悲しいようなそんな複雑な笑みを浮かべた。
「でももう杏里は…」
「ありがとう」
とつぜんおじさんがそういったと思ったらその言葉をさえぎるようにおばさんが言った。
「杏里が…なんなんですか!」
なにか嫌な予感がして俺は聞き返さずにはいられなかった。
そして俺の予想はあたっていて。
すべてを知ってしまった。
「杏里はもう…死ぬ…?」
ガタッ
『死』その言葉を口にした瞬間俺の体は目から涙が一粒こぼれ落ちるのと一緒に崩れ落ちた。