見つめ合うあたしと笹原部長。
否、あたしは睨み、笹原部長は楽しげに笑ってる
まるで正反対の二人の間を、
引き裂く勇者なんてこの世界にはいるんだろうか……。
なんて最近身につけた現実離れを披露していると
聞きなれない声が背後から聞こえた
「あれ、修平?」
男らしい低く落ち着いた声色
目の前の笹原部長とも淘汰ともまた違った声色で
ガヤガヤと騒がしい店内でも不思議と耳に入ってきた
しゅう、へい………
頭の中で復唱する。
どこか~~~で、聞き覚えのあるんだけどなぁ……
その時、視界の隅に
知らず知らずのうちに目線を逸らしていた笹原部長が
「……大宮?」驚きに目を丸くしたのが見えた
え、
「さ、笹原部長!?」
「っな、なんだよ!!」
突然グイっと顔を近づけたあたしに笹原部長がギョッとする
思わぬ大声に耳が痛くなるが構わず続けた
「あ、ああたしは芦屋ですっ!!」
「はぁ?」
「だ、だからっ……」
今、名前を素で間違ってたじゃないですかぁああ!!!!
それから、
自分の声の大きさを嘆くのが数秒後
笹原部長に手刀で叩かれるのが0.5秒後のことである。


