干物女の恋愛事情














穏やかなジャズミュージックが流れる



いつもは聞かないジャンルに非常性を感じ酔いしれてしまう






地下だからか、薄暗く

人工的な淡いオレンジ色の照明に照らされているのは






「おま、酒つったら日本酒だろ!」





光のせいで陰を濃くし、


いつもの何倍も色気の漂う




ちょっと残念な美男子







「……………あたしの飲むものにケチ付けないでください」






信じられねぇ、とぼやかれる。こっちが信じられない




それでも嫌な気分とは程遠いもので、

アルコール度数の低いカクテルを満足気に口に含む




おいしい……



甘いチェリーのお酒は、喉越しがよく。後味も爽やか







笹原部長がフッと吹き出して目を細めた





「美味そうに飲むんだな、おまえ」




そう言って日本酒を煽る




「あーそれ、よく言われます。先輩にご飯作るとこっちが嬉しくなるって。自覚とかないけど、美味しいから仕方ないんですよ」





笹原部長の方を見ずに淡々と。しかし、隣で微かに笑う声がして視線を向けた



そこには声を押し殺して笑う笹原部長。





いや、あの……笑う要素がどこに?






「なぁそれって無意識?」


「はい?」




言ってる意味がわからない。ついでに笑ってる意味も。




きっと怪訝な顔をしているであろう。だけど笹原部長は機嫌を損ねるどころか


さらに楽しそうに切れ長の瞳を細めて








「だって、それぜってぇ淘汰だろ」




今の話に出てくる奴、









あ、ほんとだ………



あたしは無意識に淘汰を例に挙げていたらしい