なるべく、な~るべく遅く歩いて、
先輩いや、人としての信頼を完璧に失うであろう、ファンタジー自室にたどり着かないようにしてたのに
「………」
「あれ、先輩入らないんですか?」
………着いてしまった。
終始無言だったからか、予想を遥かに超えたタイムだ。
【まいるーむ】
そう殴り書きされたようなプレートを今すぐはぎ取りたい
何故に平仮名なんだ。
せめてカタカナでしょうが
そして、淘汰くん。
君はもっと隠れて笑う努力をしたほうがいいとおもうよ。キッと肩を震わせる奴を睨む
「先輩って…何気に可愛いですよね。何気に」
おい。なんで二回言ったのよ
だけども、今はそんなこと気にしてる余裕はなく……
「淘汰、ちょっと待ってて」
「はい?」
不思議そうに首を傾げる淘汰の肩を押して後ろに下がらせる
「なんで待つんですか。先輩いつも部屋だけはいつも綺麗って威張ってるのに」
「えっ…よ、よく覚えてるね」
「いや、絶対嘘だなって思ったから」
ニッコリ爽やか笑顔。
だけど騙されてはいけない。顔以外に注目すると言ってること酷すぎる!
あ~会社の女の子達に大声で淘汰の素顔バラしてやりたい
絶対みんなびっくりするのに
「理由は?」
今度は少し強めに聞いてきた。
顔付きもどこか真面目
って…理由なんて………部屋掃除なんだけど。
「あー…ほら、アレよ。アレ」
言いよどむあたしに淘汰がコテリと首を傾けた
「アレ…?」
「うん、そうそう!!なんか飛び出してくるかもしれないから」
「先輩の部屋は動物園ですか?」
ちょ……んなわけあるか!!
その意地悪く口角をあげた笑い方は、不覚にもキュンとする


