途端に笹原部長の顔がキョトンとした
「なに笑ってんだ…変な奴」
どうやら笹原部長も飲み物を取りに来たらしく、
怪訝な瞳をあたしに向け自分専用のカップを取った
…そっか、笹原部長もカップあるんだ
あたしも作ろうかな……
この会社ではこういう休憩のため、
入社と当時にある程度の私物の持ち込みを許される
だけどあたしは私物にお気に入りのカップがなかったため
持ってきていなかった。
よし、明日買いに行こう。
そんな決意をしながらふとカウンターの隅に鑑賞植物に目がいく
こんなの…ここにあったけ
「…笹原部長ー」
「……なんだよ」
深い黒のコーヒーを啜りながら目だけが向けられる
「あんなところに…植物なんてありましたっけ」
確かあんなところにあんなもの、あたしの記憶上ない
単子葉類なのか平行脈の葉がいくつも重ねられ、
毒々しいまだら模様があるソレ。
どうみても綺麗じゃないような……
じーっとソレを見つめるあたしに
「あぁ…それ」と思い出したように言う笹原部長
「確か宝塚が置いとくーっつてたような」
た、宝塚課長が……!?!?
宝塚課長の名前が出た途端、なぜか納得してしまったのは置いといて
あたしはその禍々しい植物に手を伸ばす
「そういえば、植物収集が趣味なんでしたっけ?」
「…変わってるよな」
「えぇ全く」
本当に宝塚課長は変わってる
数日前にもあの油っぽい顔に粘着質な目をギラギラさせて
あたしに変なオカルトちっくな本を読め、と勧めてきた
勿論全力で断ったけど…。
鋭く唸った歯に触れてみる
わぁ…つんつん
その時、シュッと音がして指先に熱が発生した
「…痛っ…!」
思わずそう声を上げ、指先をみると
なるほど痛みを感じた部分が切れていた
…宝塚部長め


