干物女の恋愛事情
















日はすっかり沈み夕焼け空が消えかかるのが

ちょうど背伸びをした窓の向こうに見えた





もうこんな時間か……




あれから何時間集中していたのかわからない


だけど、とにかく無我夢中で手と頭を働かせていて、

何度か同僚が話しかけてきてくれたような気もしてけどあんまり覚えてない




「…重症だ」






チラリと封筒があることを確認して淘汰を見る


淘汰は相変わらず整った顔で真剣にディスプレイを見ていた




その真剣な顔に話しかけてはいけないと判断する




……コーヒーでもついできてやるか





ガタっと席を立つと、理央と目が合い


淘汰の邪魔にならないように「きゅうけー」と言う



淘汰は気づいていないようだった






オフィスの角でちょうどみんなの視界から遮断された場所に

休憩できるようにと配慮されたお茶やらコーヒーやらアップルティやら



よく休憩するため使い慣れているあたしは


迷わず淘汰愛用のマグカップを手に取る




確か淘汰はミルクいれなきゃダメなんだよねー…


あ、この砂糖。淘汰好きっぽい…



新作なのか新しく配備されていた砂糖を手に取り、コーヒーを入れる




すると背後で人の気配がして、

タバコの少し苦い匂いが鼻をつつく




「芦屋?」


後ろ姿だけでは判断が付かなかったんだろう、

ハスキーな声が確認するようにあたしの名前を呼ぶ



「はい」



振り返ると手にタバコを持った笹原部長が立っていた




あたしがじーっとタバコを見つめると

慌てたように胸ポケットへとソレを突っ込む笹原部長



「…言うなよ」



と、低い声で念を押してくる



別に言わないのに…

ここが禁煙だからって。




だけど焦る笹原部長が可笑しくてクスッと笑った