みんなが帰っていく中
あたしは黙々と作業をこなしていた
そんな黒いオーラを背負ったあたしに同僚は声をかけずに出ていき、
理央もメールで『ごめんっ合コンだから手伝えない!!』って去っていった
ふんっだ
合コンなんか別に行きたくないもんねー!!!
ここで仕事してるほうがよっぽど楽しいし!!
あたしの就職した会社はファッション関係を専門に扱う雑誌編集社
しかもそのなかでの総合演出を任されている部にいるもんだから
仕事に遅れをとるわけにはいかない
だからあたしの残業は一週間にゆうに4回
だけど好きでこの仕事を選んだわけだから後悔なんてしてない
デザインを考えるのも楽しいし!!
すると不意に隣りの席でガタッと椅子が動く音がし、
パソコンに向けていた目をゆっくりとそっちに向ける
そこには帰り支度を整えた淘汰があたしを見下ろす形でいた
「先輩、まだ残っていくんですか?」
少し心配気味の声
毎回毎回の恒例な質問だ
「まぁね。やることやったら帰る」
「やることって…まだ後こんなに。これ3時間弱かかりますよ」
淘汰で3時間
あたしで……4時間
「い、いいの!淘汰は終わったんなら早く帰れば?」
「まぁ帰りますけど」と言葉を濁す淘汰
どうやらなにかが後ろ髪を引っ張っているらしい
「…なによ」
パソコンを睨みつけながら言う
すると淘汰はハァとため息を漏らし、
ひざ掛け用の毛布をあたしのデスクの下から取り出してあたしの肩にかける
なんでそこにあるのを知ってるんだろうか…
でも暖かくて気持ちがいい
「いいですか、先輩。残るとしても10時には終わってください。最近物騒ですよ」
淘汰は心配症なんだと思う
その証拠にうんと頷いたあともまだ帰らない


