走った。川の橋を渡り商店街を抜けて家に向かう。
あとは、かどを曲がるだけ。奏恵は、猛ダッシュした。
しかし、かどを曲がった時誰かとぶつかってしまった。

『いってぇなぁー。』

どこかで聞いた声。でも、怖くなった奏恵は、土下座をした。

『すいません。すいません。すいません。すいません。すいません。すいません…』
何度も何度もあやまった。
『おっお前…。』

『えっ??』

奏恵は、驚いた。ぶつかった人は、今日、教室で話し掛けてきたあの男だった。
『まっまさか…あの時の男の子!?!みんなに見られて恥ずかしかったんだから!』

奏恵は、怒った。

『あん時は、悪かったって…。てか、なんでお前怒ってんだ?』

『気付いてないの?私、恥ずかしくて恥ずかしくて…』

『オレだってはずかったって。だって座ろうとしてお前に話し掛けたら、急に教室飛び出すんだもん。』

奏恵は、この時、悪いのは、こいつだけじゃない。私もなのか?と思った。

『名前は…?』

男は、奏恵の胸元ポケットについている名札をのぞいた。

『ちょっとぉ!どこみてんの?』

『はぁ?名札みただけじゃん!何そんなキレてんの?まさか…』

奏恵は、目をそらす。

『別にそんなんじゃないわっ…。』

『へぇー。でも、ちょっとドキッとしただろう?まぁ、ドキッとするのは、当たり前だろうかなぁ…(笑)』
『何言ってんの?自分?』
『この顔みてわかんない?オレ、超イケメンじゃん。』

こいつが何をいってるのかわからなかった。

『わけわかんない…。』

奏恵は、この男がめんどくさくなり別の道から帰ろうとした。
すると、男も後ろからついてきた。
奏恵の歩くスピードがあがる。男の歩くスピードもあがる。
奏恵が走ると男も走る。

『ついてこないでもらえます?迷惑なんですけど?』
『オレも家こっちだから。』

『じゃあなんで私が急ぐとあなたも急ぐの?』

『別に…急いでねぇし。フッ…何勘違いしてんの?お前、オレのこと好きなんだろぉ?』

その言葉にもっと腹がたった奏恵は、

『女の子のあとをついてくるのは、立派な犯罪ですよ?うっうわぁ…』
奏恵は、ウソ泣きをした。

『ごっごめんって…。』

奏恵は、下を向きながら『フッ』と笑った。男は、ウソ泣きをしたらあやまってくるっていうことを知った。

『わかってくれたら、もういいよぉ!』

奏恵は、ニッコリ笑った。
すると、男の顔が変わった。一目惚れをしたみたいに…。

『オレ、菊地爽太(きくちそうた)ってんだ。お前は、今日からオレの彼女な!』

そういうと菊地は、きた道を帰っていった。