『小林くん、久しぶり。どうしたの?』
『今日…菊地が大阪にいっちまう…』
『そうなんだぁ…』
『そうなんだぁ…って…。お前は、このままでいいのかよ!?菊地が大阪にいくんだぜ?』
思い出したくないものを思い出してしまった。
『私には、関係のないことよ…じゃあ…』
奏恵は、ドアをゆっくりしめた。
『今日の4時…今日の4時に家をでるって…』
奏恵は、ドアにもたれかかって泣いていた。
ピーンポーン
またチャイムがなった。
奏恵は、荷物をもって外にでた。外には、黒羽がいた。
『なに?なんでここにきたの?』
『迎えにきた…。』
『意味わかんない…。』
『早くいかないと遅刻する。早くいくぞ!』
黒羽は、奏恵を引っ張った。奏恵はひきづられた。2人は、無言のままあるいた。歩いていると、奥のほうから話し声が聞こえた。話し声は、あの曲がり角からした。奏恵達は曲がり角を曲がった。すると曲がった時、誰かとぶつかった。奏恵達の前に、彩香と菊地があらわれた。奏恵は、目を大きくひらいた。菊地と奏恵は、目が合った。
『奏恵…』
『爽太…』
2人は、動きがとまった。
『爽太ぁ…いこぉよぉ!』
『そーだなっ!この女、じろじろみてくんだけどぉ…マジキモいんだけど』
横にいた彩香が菊地をつれていった。奏恵は、菊地の後ろ姿をずっとみていた。
『まだ頭から菊地が離れないのか…?』
『うん…』
奏恵の顔は、暗くなった。
黒羽は、ずっと奏恵の顔色をうかがっていた。バスと電車を使って学校にいった。教室にはいると愛香が
『おはょっ』
といってくれた。
『おはよぉ!』
奏恵は、愛香達といるときが一番たのしかった。
『今日は、みんなで服みにいこぉ!』
『OK』
『ラジャー』
『いいよぉん!』
『奏恵もいくよね?』
『うんっ』
菊地…今日でさようならかぁ…
菊地と会えるのが今日で最後…。そう思うと、授業に集中できなかった。
そして、学校が終わった。奏恵は、やっぱり菊地が気になってしまった。
『ごめん…愛香…』
『ん?どーしたの?』
『今日、会わないといけない人がいるの…。だから…』
『いいよ!でもそのかわり、次のお出かけは、一緒にいこぉねっ』
『ありがとっ』
奏恵は、走って教室をでた。
『ちょっとまて…』
黒羽は、メガネをはずして奏恵をおいかけた。
奏恵は、菊地の家にむかった。今は、3時前。今から走っていけばギリギリ間に合う。
3時10分…
3時25分…
3時45分…
どんどん時間がちかづいてきた。
3時55分…。奏恵は、菊地の家の近くまできた。電柱に隠れてみていた。菊地は、車の前にいた。菊地のまわりには、クラスの子がたくさんいた。ふつうなら奏恵もあそこにいるはずだが、今はクラスの一員ではない。だから菊地の目の前になでいけるはずがなかった。奏恵は、菊地をしっかり目にやきつけた。
今日で菊地をみるのが最後…。しっかりみないと…。
奏恵は、泣いていた。奏恵は、泣きながら家に帰った。
バンっ
いつもの曲がり角でまた誰かにぶつかった。ぶつかった相手は、黒羽だった。
『黒羽くん…』
黒羽は、奏恵を抱き締めた。
『泣くな…泣くな!もう、お前の悲しい顔なんかみたくないんだよ』
『えっ…』
『もう、菊地のことは忘れろ!!お前に答えをかえしてもらってない…。俺と付き合わないか?俺と付き合って、菊地のことを忘れてくれ…』
『あっ…うん…』
奏恵は、『うん』といってしまった。口が勝手に動いてしまったのだ。
今日から黒羽と思い出をつくります。


