「……うん」 本当は、何が?って言いたかったけど、あえて言うのを止めた。 きっと、俺を避けてた事に対する謝罪だと思うから。 そして俺は安心して彼女を抱きしめた。 「ごめんね、空木」 淋がもう一度、俺の腕の中で言った。 「……うん」 俺は大丈夫って言いたかったけど、それが何に対しての謝罪か分からなかったから言えなかった。 さっきとは違って、淋の今の「ごめん」の中には、何か固い決意が込められていたような気がしたから。 ―—ねぇ、淋 君の中に俺はいないの?