「あれ、わんこじゃん。何やってんだこんなとこで」
――なにって……説明するのが面倒くさいな…。
なんて思っていると、またもや千秋の発言が。
「真昼間から?」
「なにが?」
――マジでどうしたんだ
オマエ何言ってんだ、医者に診てもらった方がいいんじゃねーの?
うん、マジメにそう思う。
「不倫」
「は?」
俺は顔をしかめた。
唐突になんなんだ。
しかも不倫って。
「…よく分かんねーけどさ……」
って、あ。
俺は続きを言おうとして、ハッと気づいた。
千秋の中にはヤナセいんじゃん。
あいつヤナセと会話してたのか!!!
謎が解けていく。
「ヤナセと話すんなら口に出すなよ」
そして俺は何もなかったのように続けた。
「なんで?」
「ヤナセの声は俺らには聞こえないから、一人で意味分かんねえことを言っている変なヒトにしか見えねえぞ」
あれは傍から見ると、イタイ人だ。
完ぺき。
「え。エェエ…じゃぁ、俺……ずっと一人で喋ってたってこと!!?」
漸くそのことに気付いた千秋。
どうやら軽くショックを受けているようだ。
「本当に!!?」
千秋が両手で顔を覆う。
――何が本当なのかはよく分からんが、ドンマイ
「嘘ぉおおおお!!!」
ヤナセが千秋の疑問に思っていたことの答えを言ったのだろう。
千秋の悲痛な叫びが少しだけ木霊した。
≪おしまい≫


