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俺の名前は凌。
銀鬼だ。
「兄貴ぃーっ」
そして振り返ると、俺の片割れが嬉しそうにパタパタと寄って来ていた。
「やっつんが苛めて来るー」
笑顔でそう言う彼女は楽しそうだった。
「おまえ、この前は谷津のこと『やっちん』って言ってなかったか」
「あれ、そうだっけ?」
首を傾げる彼女に、俺はでこピンをした。
彼女は女のクセに袴を着て、まるで男みたいに目つきが悪い、俺の双子の妹。
百合比瑪(ユリヒメ)。
「あっ、見つけた!!!やっちんやっちん!!!凌のトコいたよっ」
「げっ、颯天…」
家屋の影から出てきて、俺と目が合った颯天は影の方に叫んだ。
「次こそぶん殴る!」
その影の方から、谷津の心底苛ついた声がする。
どうやら彼女が付けたあだ名を気に入ってないようだ。
「止めとけ止めとけ、仮にも女だから」
黒いものを纏いながらこちらに歩いてきている谷津の前に吉野が現れ、彼を制止する。
「仮ってなんだ!!!仮って!!!おれはれっきとした女だ!!!」
腰に手を当て、頬を膨らましている妹が言った。
それを見て颯天はキョトンとする。
「目つき悪いし、口も悪いのに?」
「うっせ颯天!!!」
「僕は本当のこと言ってるだけだしー」
その言葉にムッとなったのか、彼女は颯天の腕をむんずと掴み、自分の胸に当てた。
「「「!!?」」」
「ほれ、女だろ」
それを見ている誰もが目を見開くが、彼女は恥ずかしがる素振りも見せず、ほくそ笑んだ。
「お、おおおんなだ!!!本当に女だ!!!すっごいむにゅってした!!!」
顔を真っ赤にさせながら、颯天が後ずさりをする。
「おい百合比瑪!俺も触らせろ!」
「やっちん何言ってんの!!?」
「颯天だけズルいだろ!」
「なんだぁ、やっつんもおれに興味があるんだ?」
「おまえに興味はない」
「あ?」
「おまえの体に興味がある。特に乳」
「だから何言ってんの、やっちん!!?」
颯天が叫び、百合比瑪が大笑いする。
その様子を俺は吉野と見ていた。
「……凌、」
「ん?」
「おまえの妹には羞恥心がないのか」
「……ない…ようだよな、あれ見ると」
――全く
あと五年で十四になるのに何やってんだか…。
俺は呆れたように息を吐き、隣に立っている吉野は苦笑した。


