千秋は不良…もしくはヤクザとか言われる人間と対峙していた。


「人数多くても俺が勝つ」


――ん!!?


彼がいきなりそんな言葉を発する。


表情はここからでは上手く見えない。


「突然なんだぁ?随分とやる気満々な宣誓じゃねえか」


男が千秋を煽る。


「なんてったって梔子様が直々に鍛えてくださったからなー」


千秋はそう言い、腕を組んだ。


――うわ、千秋マジでやる気満々じゃん


俺は少しワクワクして見守る。


「鍛える?オマエ柔道有段者とか、その類の人間か?」


男の声が少し怯んでいるように感じられた。


「そん時は逃げるが勝ちだろ」


千秋はそう言い、フンと鼻を鳴らす。


――んん!!?どうした!!?


なぜか聞かれていることに対して、全くもって違う答えを千秋が言った。


「俺の話聞いてたか?」


慎重に、且つ、ゆっくりと、男が言う。


――お、この男ちょっと優しいんじゃねーの?


フツー……とはいってもフツーがどうなのかはよく知らないけれども。


こんなとこだったらキレるもんなんじゃねーの?


そんな俺のことなど放っておいて、会話(…なのか?)は続いていく。


「ここでヤナセ使ったらマズイだろ?」


――お前の耳の方がマズイと思うけどな!


千秋がそう言い、俺は咄嗟にそう思った。


だけど、言わない。


「オマエ誰と話してんだ!!?」


とうとう堪忍袋の緒が切れたのか、男がそう叫んだ。


――うん、分かるよ、その気持ち


マジで誰と話してんだろうね、千秋は。