鼻にかかる臭い………


医務室かしら………


「起きたか?莉依紗。」


大樹が心配そうに覗く。


起きようとして体を起こしたけれど案の定ふらついてしまった。


「寝てろよ。軽い貧血らしいから。」


大樹はあの子のこと知ってるの?


「大樹、教室で話しかけてきたあの子って………。」


一瞬大樹がピクッと止まったような気がした。


「落ち着くまでは教えることはできない。」


いつになく返ってきた声は冷たかった。


「今宵って?」


「お前の記憶が戻ったら話す。」


そうやら何聞いても教えてくれなさそう。


というより話す気がなさそう。


「まあまあ大樹様。莉依紗様はすぐに回復されると思いますので大丈夫ですよ。」


安藤学園長………ここでは安藤先生が苦笑いをしながら答えた。


「莉依紗様。頭痛の原因は精神的ショックです。無理に記憶に刺激を与えないでください。」


「分かりました。気をつけます。もう部屋に戻ってもいいですか?」


「はい。大丈夫でございますよ。」


「莉依紗、俺の首に腕を回せ。」


「こう?」


大樹の顔がどアップ………恥ずかしすぎる。


大樹は私をひょいっと抱っこした。


「行くぞ。しかしお前は軽いな。」


「お願いします。軽くないわ。」


そんな私たちの様子を学園長は微笑ましく見ていた。