「でも結婚して社長夫人になってから体調を崩し始めてな………。大樹を産んだあとから度々病院で検査してもらってた。」


「………お父様は気にしてたんじゃないですか?」


「かもな。莉依紗を連れて病院へ行っていたしな………。」


「それは雪穂から聞いた。でもあの時は余裕がないほどきつい事件があって何年間も仕事詰めで会いに行けなかった。」


「わしは何度も奈々子に励まされた。………後悔していませんからって。」


「莉依紗の記憶を戻させるほど不思議な力があってさ、占いが得意だったよな。」


「そうだった。自分を棚に上げて人の心配ばっかりして。どんな時でも笑っていた。」


お祖父様がお祖母様を見る目は優しかった。


「………ユリは容姿も性格もよく似ているが、運動神経がいいのは違ってるな。」


誠一郎お祖父様が天井を指差した。


そこには私とそっくりの笑顔で笑っているお祖母様の遺影があった。


お祖母様は幸せだったよね、こんなに愛されてて。


遺影の中で笑うお祖母様の笑顔はキラキラしていた。


「お祖母様、解決したから安心していてね。」


線香を一本さして、私は静かにお経を唱えた………。