「目が覚めたような気がします、お父様。」


「………そうか。誰だって私情はあるからコントロールを徹底しなさい。」


最後は穏やかに、忠告された。


「ユリはどうなんだ?」


お父様は祖父として会ったことがないから不安そうに聞いてきた。


いつもの怖い雰囲気は全くない。


「亮治から聞いてませんか?」


「特に何も。話して良いという許可が降りなかったと聞いておるし。」


「………学園内の出来事は外に漏らさないのが原則ですからね。ユリは………精神面が心配ですね。」


私はお父様にこれまであったことを出来るだけ細かく丁寧に話した。


「そうか………誠一郎は奈々子似のユリを後継者にしたいんだろう?」


「何で言ってないのに分かったんですか?」


「警視総監あるまじき発言だが、『親友の勘』ってやつだよ。奈々子への執着は異常だったから。」


……そこまでユリと奈々子お母様は似ていたかしら?


「奈々子に似ておるとは思うがあいつは少し孫としての可愛がりが入っているだけだ。」


あのお義父様がね………。


「そろそろ戻らねばいかん時間だ。………これをお前に渡しておく。有効に使ってくれ。」


………何この書類の束!?


「客観的視点を忘れずに。それができる人にその書類を渡せ。良いな。」


「了解いたしました、警視総監様。」


最高敬礼で理解を示す。


納得そうな表情でお父様は帰っていった。