『千里山中学校、3年、水野 杏南。』

「行ってきなさい。杏南!」

―頷いて背中を押す監督。


「部長!頑張って下さい!」

―タオルを握りしめて顔を近づける後輩たち。

「行ってらっしゃい。」

―疲れているはずなのにわざわざ見送りに来てくれた親友。

「悔いを残さないように……」

―嬉しそうに微笑む両親。


皆の声を背中に感じながら通路を歩く。
中学最後の大会。
練習もスキルアップだってしてきた。

大丈夫。大丈夫。


会場では丁度テントを運んでいて、テントが積み上がっていく。

「あっ、杏南!」

「久しぶり!」

テント近くで手を振っていたのは他校のライバルの1つ年下の男の子。
先程終わったらしく額には汗が滲んでいる。

「どうだった?」

「二位だった。」

「そっか…」

「でもいつか杏南に追い付くから!!」

「待ってる。」







「危ないっ!!!!!!!!!!」


咄嗟に上を見ると、荷台から落ちてくるテント。
それはまっすぐ目の前のライバルへ。

「避けてっ!!」

「杏南……………?」

力を入れてライバルを押す。
そのままライバルは後ろへ倒れていく。