そよそよと流れる風を感じながら車椅子を押す。

やっぱり風は気持ちいい。

「水野さーん」

後ろを見れば笑顔で手を振る看護師さん。

私も手を振り返す。

「体、冷やさないようにしてくださいね?」

「はーい。」

少しふざけた返事をしながら車椅子を押していく。
退院する小さな子供を見送る看護師さんと先生。
それを泣きながら頭を下げる両親。
その光景に微笑みながら手元のシューズを眺める。









『君の足ではもう、走れない。』











医者からそう言われた中3の夏の終わり。