渋谷は、学校では行ってはいけないと言われている場所だった。

 直子は、先生に見つかった時の言い訳を考えながら渋谷に足を踏み入れた。

 渋谷に入ってすぐ、カツアゲをする声が聞こえた。

「金出せよ!」

「…カネ?なんだ、カネって」

 金がわからない人間なんて赤ん坊以外にはいないはずだ、と直子は思った。

 となれば、カツアゲされているのは、瑛太だろう。

 直子は声のした方へ向かった。

「金も知らない!?あぁ!?とぼけんな!」

 直子は高校生に絡まれているのが兄である瑛太だと気付いた。

「やっぱり…」

 直子が呟くと同時に、瑛太が振り向いた。

「おぉっ!直子!ちょーどよかった!」

 瑛太は人懐っこい笑顔で走ってきた。

「なーなー、カネってなんだぁ!?」