「志保先輩…ですよね?」
部活の休憩中、彼から急に話かけられた。
「?うん。
えーとっ、確か高田奏斗くん…だよね。」
「そうです。」
「どうかした?
何か分からない事でもあるの?」
「あー、えっと違うんですけど」
「?」
「いきなりですけど先輩、宮本さんの事好きですよね。」
「はっ!?」
まさか奏斗くんからそんな事を言われるとは思ってもいなかった。
確かに、この時既に私は宮本先輩の声が好きだった。
「俺、結構観察力があるんですよ。
それで、最近気付いたんです。
志保先輩は宮本さんの事好きなんだろうなって。」
「…だったら何でしょうか?」
すこし恥ずかしかった。
「いや、別に何かしようとかじゃないんですよ。
ただ一柳さんの事知ってるのかなって思って。」
美咲先輩は何回か剣道部に顔を出していた。
だから剣道部の皆美咲先輩の事知っていたし、たまにマネージャーの仕事も手伝ってくれた。
それと同時に、宮本先輩と美咲先輩の関係も薄々気づいていた。
美咲先輩に勇気を出して聞いてみたら否定された。
゛付き合ってないよ゛って。
でも…、宮本先輩は美咲先輩の事好きなんだと思った。
何て言うか見てればやっぱり分かるもので。
「…宮本さんが美咲先輩の事を好きっていう話?」
「やっぱ知ってたんですか。」
「だったら何?」
「いいんですか、好きな人を他の女子に捕られても?」
「それって私が口を挟む事じゃないよね。
宮本先輩がどうするかは私が決める事じゃないし。
先輩が幸せそうならそれでいいよ。」
何でこの人はこんな事聞いてくるんだろう。
「…へぇ、なんか先輩って面白いですね。
これからよろしくお願いします。」
奏斗くんがニコッと笑う。
何がよろしくお願いしますなのか正直よく分からなかったけど、私はこの日を境に奏斗くんと話すようになった。
「おい南。
もう終わったのか?」
皆着替え終わったのか部室から出てきた。
「もう終わりました。」
「よし、じゃあ鍵閉めるからもう出ろ。」
「はい。」
私も帰り支度を簡単に済ませ体育館から出る。
「お前ら忘れ物ねーな。」
『はーい。』
同じ剣道部の人と話ながら靴箱に行くと、美咲先輩が同学年の人たちと話していた。
「あ、志保ちゃん!
部活終わったんだ。」
「はい。多分宮本先輩もすぐ来ますよ。」
「ありがとう。」
そう言ってニコッと笑った先輩はとっても可愛かった。
「おー、美咲。悪いな待たせた。」
鍵を返し終えた宮本先輩が来た。
「大丈夫だよ。」
「じゃあ帰るか。
南も気を付けて帰れよ。」
「はい、さようなら。」
「ばいばい。」
「明日な。」
一礼して帰る。
私と先輩たちは帰る方向が逆だから一緒に帰ることはできない。
例え同じ方向でも2人と帰ろうとは思わないと思うけど。
こうして今日もまた、私の1日が終わっていく。
