宮本先輩は怒りっぽくて、いつも眉間に皺がよっている。

そんな先輩も、美咲先輩の前だと違う。

優しそうな表情。


私には見せない表情を、美咲先輩の前だとしている。


2人は、正直とってもお似合いだ。

だから…


「別にそんな事思ってないよ」

「え?」

竹刀を片付けている奏斗くんに言った。

「私は、宮本先輩の事好き…だけど、美咲先輩の事も好きだし、邪魔だなんて思ってないよ。」

言い終わって奏斗くんの顔を見ると驚いたような顔をしていた。
けどすぐに笑みを浮かべて

「ほんと、志保先輩って優しいですよね。

普通なら先輩は美咲先輩の事、邪魔に思うはずですよ。」

「はぁ、…奏斗くんって心歪んでるよね。」

「ひどくないっすか?」

「だってそういう風にしか物事考えれないんでしょ?

自分の思い通りにならない物全て邪魔だと思ってるよね。」

「別にそんな事…

まぁ強いて言うなら欲しいモノは全部欲しいんですよ。」

「!…奏斗くん」


「おい南!奏斗!

お前らいつまで片付けしてんだよ!早くしろ」


「す、すみません!」

宮本先輩の声が聞こえた。

「今行きまーす!

じゃあ後は先輩に任せていいっすか?
俺着替えてくるんで。」

「え、あぁいいよ。」

「ありがとうございます!」


そう言って奏斗くんは部室へと走っていった。


…最後の奏斗くんの言葉

゛欲しいモノは全部欲しいんですよ゛

どうしてだろう。

何故か奏斗くんの表情が切なげに見えて。

あの言葉には何か、深い意味でもあるのだろうか。


私も、奏斗くんの事はあまりよく分からない。

奏斗くんは剣道部のムードメーカーで、皆と仲良しで。

たまに廊下とかで見掛ける時は周りに沢山の人がいる。

私に対しては少し馴れ馴れしいけど、それも悪い意味ではないと思ってる。

私が奏斗くんと話すようになったのはいつだったか。


確か、奏斗くんが剣道部に入ってから少し経った日、急に彼の方から私に話かけてきたんだと思った。