美幸はスピードを緩め、
真二の家を横切ろうとしていた。
部屋の電気を確かめながら、
ゆっくり、ゆっくり走っている。
彼女の表情からは、
電気はついてないみたいだった。
バックミラーに彼の家が見える頃には、
車の速度は、戻っていた。
道を抜け、
右に、
さらに右に。
美幸はまた、スピードを緩めた。
見えてきたのは、また真二の家だった。
さっきとは、別の角度から
観察できる様子だった。

美幸の目は真剣に、真二の姿を探していた。
コンナに近くに座っているのに、
彼女の目には私はいない。
彼が残したであろう、跡を必死にみている。

胸が締め付けられた。
何とも、言えない。
美幸…。
彼女を憐れだと思った。
彼女の行為は、ストーカーと言えた。

彼女は私の気持ちなんて、
お構いなしで、一人言を呟いている。
「バイクあるし、家に帰ってる筈…
 部屋の電気ついてへん…
 どっか出かけてるんやろか…。」

彼女の辛さとは、また別の感情が、
私の心を毟った。