「いっそのこと、」
ユウが俺の手を取って、その手をユウの首元に持っていく。
俺の手がユウの首に掛かった。
「ヒロが俺を殺してくれたらいいのに。」
その表情は穏やかで、見惚れた。
「い、嫌だよ。犯罪者にするつもり?」
「ははは、冗談だって。」
手が解放された瞬間、木枯らしが吹き荒れた。
「寒っ…………」
「中入る?」
「……もうちょっと、ここに居たい。」
ユウの手をぎゅっと握った。
「この桜が咲く頃にさ、名前思い出してくれない?」
手を握り返して、ユウが言った。
「いいよ。」
「思い出したらさ、その後はもう忘れて。」
「……………。」
「桜木 優羽(サクラギ ユウ)って言うんだ。」
「桜がある。」
「いい名前だろ?」
それが最後の会話。


