「結城くん」
彼が振り返る前に私はその手を掴んだ。
階段を上がる結城くんの手をさりげなく掴んで歩き出す。
「手汗かいてますよ、俺」
さっきぎゅーって抱きついてきたのは誰よ?
こんな手繋ぐぐらいでそわそわされるなんて。
私もかなり勇気を出してこんな行動に出てるんだけどね。
好きって、突然伝えたくなった。
叫びたくなった。
「大好き。結城くん」
小さな声で呟いて背中をポンと軽く押した。
私がついていけるのはここまで。
「先輩、大好き」
振り返った結城くんは満面な笑みを見せてそのままコートへと入っていった。



