結城くんはそう言って立ち上がりエナメルバッグとラケットをしょった。 次は結城くんが降りる駅だ。 20分が短く感じられた。 「じゃあお疲れ様でした。気をつけてくださいね」 「結城くんも気をつけて」 私が手を振ると照れたように笑って軽く頭を下げてホームへと降りて行った。 電話帳に新しく追加された“結城奏斗”という文字を見て不思議に思えた。 あんな整った顔立ちの人に出会ったことがない。 一人になった瞬間眠くなりウトウトしていたら駅に着いた。 疲れたから今日は早く寝ようっと。