ラジオ【短】

「その本戻してきたら、聴かせてあげるよ。今、面白いから。」


僕はハッとして、棚に急いだ。


あの田中さんが、“例の一連の動作”以外で微笑んだことも、

「聴かせてあげるよ」と言ったことも、

僕には驚く材料として十分だった。


僕は急いで背表紙を確認して、棚を眺めた。


あの田中さんが“面白い”と言うなら、それほどのものだろう。


僕は期待が膨らんでいくのが自分でわかった。