「ねー、蓮はいつまでここにいるの?」
「・・・は?なんじゃそりゃ」
今日は天気がよくて、冬の朝でも少しだけ暖かい。
蓮の後ろに隠れているから、風の冷たさを感じないのかもしれない。
自転車を二人乗りして、坂道を勢いよく降りていく。
カーブが怖くて、ぎゅっと蓮の背中に捕まるから、少しだけ気まずくて、話題をふったつもりだった。
「ここって、どこだよ。この街?」
「うん。いつかは会えなくなっちゃったりするのかなー、なんて。」
そっか、といいながら、蓮が笑ったのがわかる。
ちょっとだけ前に彼の体が傾いた。
「俺と離れるのが寂しいかー」
「そ・・・そうじゃないよ!」
きっと今、ニヤニヤしてるぞ、こいつ!
「朝が苦手だからさ、わたし。起こしてもらえなくなったら、困るでしょ?・・・ね?」
必死に誤魔化そうとしてるけど、多分バレバレだ。
「ふーん」
蓮のこぐ自転車は、ありえないほど早い。
風を切って、風をコントロールするのがうまい。
彼は、風の魔力をもってるの。
私にはない、魔力。
だから、ほら、遠くへ行ってしまいそうで、焦ってしまう気持ち、わかるでしょう?
蓮の、ばか。
いくら彼の背中を睨んだって、彼はそれに気がつかない。
だから思いっきり睨んでやるんだから!
・・・昔とは違う、大きな背中を。
