少し重たい玄関扉を開けると、しかめっ面の蓮が、待ち構えていた。
「おせぇなあー。俺はかなの出待ちの運転手じゃねえっつーの」
「うああ、ごめん!」
完全に目が覚めてしまえば、蓮へ八つ当たりする時間はもう終わり。
手を合わせて、連にペコペコ頭を下げる。
彼が機嫌が悪くなるときは、決まって顔を左に傾けるんだ。
今も、左に傾いた顔をこちらを向けて、彼は自転車の後ろを指差してみせた。
「ほら。はよ乗れ」
整った顔が、少しだけ緩んだ。
こいつ、微笑むと、ちょっとかわいいんだよなあ。
なんて思いながら、じっと彼のことを見てしまう。
蓮が先に自転車にまたがると、「なに突ったってんの」と軽く笑い、私の右腕を引っ張った。
「―――っよっと。あれ、ちょっと痩せた?」
「わっ・・・」
ふわっと体が軽くなったかと思うと、トスンと後ろへ座らされていた。
「・・・っもお、びっくりするじゃんか!」
背中をポカポカ叩いてみるけど、「バーカ」と舌を出す彼は、余裕の表情。
「っぶ。かな、髪の毛はねてる」
いつも意地悪なことばかり言ってさ。
「しょうがないじゃんっ。ギリギリまで寝ていたいのっ。」
わたしもつい言い返しちゃうけどさ。
そろそろ気が付いてるの。
蓮の力強い力とか、逞しい体とか。
私を見るときの優しい瞳も。
もう子供の頃とは違うってことを。
