キシキシと音が鳴る階段を、慎重に降りる。


生まれた時から17年、両親を知らない私は、ずっと一人でこのおんぼろ屋敷に住んでいた。


二階は小さな私の部屋。


一階は、ガスコンロと小さな棚と小さなテーブル。


それだけの、小さなスペース。


銀色の扉が、私の姿をぼんやりと映している。


4年間着続けたボロボロの黒ワンピースが、また、くすんで見えた。


小さい頃に育ててもらった施設を出て行く時に、プレゼントしてもらったものだ。


施設のカーテンを切り縫いして、作ってくれたものだろう。


右に体を傾けてみる。


くるりと一回りしてみる。


「ありゃりゃ・・・」


さすがにほころびが目立つようになってきてしまった。


ああ、いい加減新しい服を買わなくちゃ。


パンパン、と服のホコリを払い、ため息をつく。


「お金なんて、どこにもないんだよなあ。あと2年は、この服で頑張らなきゃ。」なんて呟く始末。


貧乏なんだもの。


仕方がない。