わかっていた。
いつか、別れの日がくることは。
わかっていなかった。
それが突然なんだってこと。
俺は、珍しく仕事がなかったので、水瀬の相手をしていた。
七瀬に、少しは育児とか、できるようにしなさいと言われたから。
突如鳴り響いた、電話の音。
俺に、妙な心配を与えた。
「新見さんの御宅でしょうか。」
「はい。そうですが。」
「奥様が、危ない状態です。すぐにきてください。」
七瀬の容体が、急変した。
そう言われた。
水瀬を、おいて行く暇なんてなかった。
「七瀬‼」
俺は、急いで病院へ走った。
タクシーを呼べるような、心の余裕なんかなかった。
でも、何故だか、冷静で。
お義母そんに、睦月さんに、電話をかけ、翔希にも、電話をかけ、
俺の両親に、電話をかけた。
「七瀬‼」
俺の後ろから、
お義母さんたちの声がして。
睦月さんの声がして。
柊花の声がして。
翔希の声がして。
俺の親父の声がした。

