「これが運命だから、仕方ないよね。でもっ。でも、」

腫瘍があることがわかって、初めて。

七瀬は、弱音をはいた。

「死にたくない。私まだ、水瀬に誇れる自分になってないよ。」

俺は、ただ、抱きしめた。

ギュっときつく。

「満、今日だけは泣かせて?」

「今日だけじゃなくていい。いつでも泣いていい。俺がそばにいるから。」

そう言うと、七瀬は、俺の背中にぎゅっと抱きつき、泣き出した。

子供の頃のように、大声で。

「死にたくないっ。」

「なら、手術、受けよう。」

俺はそう提案した。

頷いて欲しかった。

でも、七瀬は、横に首を降った。

「死にたくない。でも、それ以上に、いつまでも、再発を怖がってまで生きたくない。」

その言葉は、久しぶりに、力がこもっていた。