「そうなんだ。」

「手術をしても、五分五分らしい。七瀬、どうしたい。」

「決まってるでしょ。生むよ。この子を。」


違う、
俺が聞きたいのは、生むって言葉じゃない。

俺が聞きたいのは、生きたいって言葉。

手術受けたいって言葉。


なぁ、聞かせてくれよ。

俺の望んでる言葉。


「手術しても、死ぬ可能性があるなら、なおさら生むよ。満が悲しまないように。満が、一人にならないように。」

俺は、一人でもいいのに。

そう心の中でつぶやいた。

一人になるより、七瀬と、暮らせないこ ことの方が辛い。


俺には、七瀬しか、いないのに。


「私は、新見七瀬だよ。何があっても、新見七瀬なんだよ。」

「っぁ、あぁ。七瀬は、俺の嫁だからな。新見七瀬だ。」

その言葉の意味を俺は理解できなかった。

何を当たり前のこと言ってるんだ。としか、取れなかった。

「だから、大丈夫よ。」

七瀬は、俺の好きな笑顔で笑った。

俺の大好きな明るい笑顔。