「手術したら、必ず治るんですか?」
「わかりません。成功率がかなり低い手術です。再発の可能性も高く、確信を持てません。」
それでも、俺にとったら、まだましだと思う。
助かるかもしれないという、手があるならば。
「短ければ、一ヶ月ほど。1年持てば、いい方でしょう。」
「そうですか…。」
「もちろん最善を尽くします。しかし、もしもの時のため、覚悟はしておいてください。」
俺は、無言で頷いた。
でも、もし、変われるならば、七瀬と、交代できるなら、俺が変わりたい。
七瀬の代わりに俺が病気になればいい。
腹痛めて産んだ子供の顔を見えないなんて、悲しいに決まってる。
「手術、お願いします。お腹の子より、七瀬を、妻を助けてください。」
「…。わかりました。」
俺は、医者にもう一度頭を下げ、診察室から出た。
七瀬には、すべて話すつもりだ。
手術には、七瀬の意思が一番大切だ。
「七瀬。話がある。」
「ぁ、うん。」
俺がよほど怖い顔つきだったのだろうか。七瀬は、少し怯えた顔をしていた。
「取り乱さないで、聞いてくれ。七瀬、腫瘍が見つかった。手術しないと、助かる見込みがない。」