「新見さん、レントゲン取りますね?」

「はい。じゃ、満、行ってくるね。」

七瀬は、笑顔で看護師について行く。

まるで、何でもないと言っているかのように。


そして……。


「新見さん、少し、よろしいですか?」

「?はい。」

俺だけ、呼ばれてしまった。

「奥様は妊娠9ヶ月ですよね。」

「はぁ。」

「◯◯◯に、腫瘍が見られます。」


腫瘍が見られます。

その言葉は俺の中で反復していた。


いや、俺の中にとどまっていた。

あり得ないくらいに。

腫瘍という、2文字は俺の脳内を浸食した。


「七瀬は、助かるんですよね。お腹の子供も。」

「今の時点では、何も言えません。しかし、どちらかが、命を落とす可能性もあると…。」

どちらかが、命を落とす……⁈


「ふざけんなっ‼お前医者だろ⁉医者なら、いい方法考えろよ‼俺は、助けろ何て、言わない。ムリかもしれねえからな。でも、治療する前から諦めんなよ。医者なんだろ?」

俺だって、アイドルなら、諦めるなって教わってきたんだ。

歌えなくても、踊れなくても、ファンを楽しませるために、最善を尽くせって。理由は違っても、医者だって、たとえ救えなくても、方法くらい考えられるだろ?……それもムリなのか⁇


「わかっています。しかし、腫瘍が大きくなりすぎています。手術をすると、お腹の子供に響くでしょう。しかし、手術しないと、助かりません。出産してから、手術じゃ、遅い可能性が高いです。」