そして、しばらくして部屋のドアを開けた。


そこには田部君の亡骸すら残っていない。



まるでそれが最初から存在していなかったようにすべてなくなっているんだ。



そして、コロンと転がっていた勾玉。



青いきれいな色をしている。




・・・田部君みたい。



そっとその玉を拾い上げて胸に掲げる。




まだ暖かくて優しい鼓動が打っているみたい。




そして、シトラスミントの田部君の香りがして頭の中で声が反響した。




「向こうで待ってるから。」





そうだ、私は行かなきゃ。



10個集めて返事を言わなきゃいけないの。


田部君に勾玉になる宿命があるんだったら私にはその宿命がある。




もう、涙は出てこなかった。



前に、進まなきゃ。